コラムcolumn

2024年12月20日

「習志野文化ホール・パイプオルガン・クラウドファンディング」

 習志野文化ホールは、習志野市の芸術文化の殿堂、市民の文化活動の場として昭和53年に第3セクター方式により開館し、吹奏楽で有名な習志野高校や市内の小中学校における全国水準の音楽活動を育み、市民文化祭、習志野第九演奏会など、多くの人の文化・芸術活動の醸成・発表の場として親しまれてきました。
 私自身も当時の財団法人習志野文化ホールに3年間勤務しました。ここで公益法人会計や簿記の知識を得ることができ、のちの公会計の業務に非常に役に立ちました。
 習志野市文化ホールは複合施設の一部にあり、資産としての土地はないという特殊事情があります。そうなると、資産の大部分は建物ですが、建物は減価償却をすることに価値が減少していきます。加えて、多額の借入金も抱えていました。このままでは債務超過になるとのことで、平成27年度に市に資産と負債が移管されました。そのときには既に資産(6億5千5百万円)、負債(6億6千5百万円)と負債の方が1千万円多いという状況でした。
 しかも、開館から40年以上が経過し、施設の老朽化が進んでいることもあり、文化ホールを含めた民間商業施設の建替えに向けた検討が進められ、令和5年4月1日より長期休館となっています。文化ホールには建設当時約1億円をかけて設置されたパイプオルガンがあります。このパイプオルガンの解体や設置作業には多額な費用を要することから、財源確保が困難であることから、パイプオルガンの設置についての可否を問うことを含むクラウドファンティングが実施されました。

パイプオルガン クラウドファンティング
期間:令和6年10月1日~10月31日
目標金額:6千万円
※目標金額に達しない場合、パイオルガンは再設置せずクラウドファンティングへの支援金は全額返金します。
【結果】支援金:8千698万3千円(支援者5千647人)

 目標金額に達したことから、パイプオルガンを新しい文化ホール(令和13年の完成予定)に再設置することとなりました。
 再建設の文化ホールの建設費用は100億円を大きく超える見込みであり、パイプオルガンの再設置についてはパブリックコメントの意見も求め検討したとのこと。
 パブリックコメントの意見として「年に数回の利用であれば、維持管理を考慮し、廃棄も考えるべき」があり、私も費用対効果の面や公会計の施設更新問題などからも同意見でしたが、再設置が決まったことは多くの支援者がいたことも事実であり、今後の施設更新の参考となる事案なのかと感じました。

システムディ顧問 宮澤 正泰(元習志野市会計管理者)