2019/04/01
2019.04 レトロ京都…東京遷都150年、レトロな京都のはじまり 京都府庁旧本館
5月には新年号となる平成最後の4月である。
昭和から平成に代わった前回の改元時には、東西冷戦の終焉とか、昭和の大スターだった美空ひばりや石原裕次郎の逝去等があり、何より第三次産業革命と言われるIT-情報革命の大きなうねりによって、時代の変化を実感せざるを得なかった。
そして、大正モダンや昭和の30年代を振返るレトロブームが起こったのもこの頃である。急激な変化の中に身を置いた時、人は先々のことを思うと同時に、もはや戻りようのない過去を思わざるを得ない。何処からきて、何処へ行こうとしているのか?良きことや、懐かしいコト、ココロの故郷を美化してイメージする。遠い過去の遺跡や遺産ではなく、海外の風景や観光地でもなく、『自らがイメージし体感できる心地よい過去』、それがレトロなのだろう。
今年は、東京に遷都された1869年から150年になる。ようやく文化庁の京都移転が決まったが、殆どの中枢機能は東京に集中し、東京は紛れもない政治経済そして文化の中心である。他方、明治維新以来の京都の150年は、流出した人や資産の喪失を文化や産業で埋めようとしてきた年月である。そこには、日本文化1000年の担い手としての自負心と、『平安京以来の都』とは趣を異にする新しい時代感覚が溢れている。
明治期の、それも最古の庁舎建築である京都府庁の旧本館は、1904年(明治37年)、若き建築家松室重光によって建設された。2階のバルコニーを中心に左右対称のルネッサンス様式の建物である。その後の庁舎建築のモデルとして、明治大正期の建築物に多くの影響を与え、つい最近まで執務室として使われていた。その威風堂々とした構えと知事室や府議会議場のある庁舎と言うことから、近寄りがたい建物であった。が、近年はイベントや結婚式場としても使われて一般に開放され、映画のロケにも活用されている。廊下や階段は総大理石で、知事室や府議会議場の室内装飾や調度品はいかにも明治の活力と上品な佇まいが醸し出され、100年前にタイムスリップしたかのような気分にひたれる。
元々京都所司代の跡地と言うこともあるが、『容保桜』と命名された大きな山桜が中庭にあり、周囲の庁舎内側の外壁を借景として映えている。また、傍らには、誰が名付けたのか『八重の桜』もあり、そこにも維新政府に対するひそやかな反発心がうかがえる。(M)