2020/12/01
2020.12 京はやましろ、川の町…わずか2時間で88ヶ所霊場巡り、仁和寺成就山の厄落とし
オリンピックの開催の年として、華々しい一年になるはずだった2020年はコロナ禍で散々な年となってしまった。加えて、トランプ政権のアメリカ第一主義と中国の膨張主義、米中対立の激化と東南アジアの不安定な情勢、日本の消費税の値上げにも関わらずの財政の悪化など、コロナ禍以前からあった不吉な兆候がコロナで一挙に噴出したかのような年であった。
古老によると人間は誰しも80年の生涯の間に少なくとも二度は大きな厄災に襲われるという。戦争であったり、地震であったり、風水害であったり、自動車事故であったリ…阪神大震災とコロナ禍で既に大災難に二度もあってと安心しても、「少なくとも二度」だからまだまだ分からない。むしろ、こんな厄災は何度もあるものと覚悟して強く生きていくことが大事なのだろう。
とは言っても、人間そんなに強くはない。年末年始は洋の東西を問わず神さま仏さま、すがれるものなら藁にでもすがる。強く正しく生きると神や仏に誓ったり、弱かった自分の情けなさを懺悔したり、至る処にいらっしゃる神様仏様にお参りして、一年のアクを落としたくなる。
信心深いが多忙な人に、打って付けなのが仁和寺の88ヶ所霊場巡りだ。京都の西北には、竜安寺、妙心寺、等持院などの名刹が続き、その一つに徒然草で習った仁和寺がある。仁和元年(888年)創建の宮門跡の大寺院。
仁王門をくぐって仁和寺の広い境内に入ると、すぐ左手に応仁の乱で焼失した宇多法皇の仁和寺御殿が、その後再建されて『御殿』と称して開放されており、品の良い建物の廊下を巡り歩けるのがうれしい。圧巻なのはその庭、飲み込まれてしまいそうなスケールの大きさ。そして、仁王門や金堂、五重塔をアクセントにした西山の借景が、白い砂と石の庭を取り囲んでいる。広大な空間の広がりと人間個々の強さと儚さを体感し、竜安寺の石庭とは一味違った宇宙感に浸れる。
金堂左手の奥の通用門をくぐって住宅街を5分も歩けば、仁和寺88ヶ所霊場巡りの第一札所霊山寺のお堂に行きあたる。四国88ヶ所霊場の第一札所ということで、お堂の脇には大きな蘇鉄が植えられて、否応なしに南国の雰囲気を醸し出している。そこから、50mから100m、所によれば300mぐらいの間を開けて88のお堂が並ぶ。急峻な坂道には石段が積まれ、舗装道路と地道が混ざり、札所のお堂が目標になり、適度な休憩場にもなる。冬でも木漏れ日が差し込む山道は、市中の騒音もウイルスの恐れもない別天地である。
全行程3kmの行脚であるが、2カ月はかかるという西国88ヶ所巡りをたった2時間で可能とする。この簡素さは、或は禅の教えに通じるものなのかも知れない。しかも霊験は、西国88ヶ所に勝るとも劣らない。四国の霊場から取り寄せた砂を山道に埋めており、祈れば同じ効能が得られるという。さらに、四国の88ヶ所にはないプラスOneがある。真言宗御室派総本山仁和寺そのものの御リヤクである。
このタイヘンな1年を畏れ奉るには手軽過ぎかも知れないが、何より気持ちの区切りが大事。その上山道を2時間も歩けば、冬でも気持ちよい汗をかき、溜まりがちなストレスも解消して身も心も爽やか!ウイルスに負けない強い免疫力を養って、新しい年を迎えよう!有りがたや、有りがたや!(M)