コラム

2016.04 京の食材…色白ぽっちゃり美人の『京タケノコ』

京タケノコ 大阪や東京に比べて、京都は食材が乏しかった。否応なしに工夫せざるを得なかったのである。寒暖の差が激しい京都盆地では、栽培できる数少ない野菜にどこよりも手を加えて大事に育てて料理した。種類も量も足りないから、各地から上洛してきた人達が持参する多種多様な食材を有難く受入れ、それを丁寧に調理した。家庭で食べるおばんさい料理をベースに、口(舌)のうるさい宮中の有職料理、寺院の精進料理、各種各派の懐石料理等のコダワリのレシピのいいとこ取りで京料理となった。

 盆地周辺で収穫される山の幸―野菜は新鮮さを生かし、海の幸は蒸す・焼く・漬けると調理加工されるが、素材の味と昆布をメインに味付けされているのが京料理。同じ食材であっても、組合せによって味は異なるが、濁ることはない。『甘い—辛い』が物差しではなく、苦みも酸味もそして食感と食器も含めた『美味い—不味い』が基準である。

 春の食材の代表は、筍である。元々自生していた竹のタケノコは、細くて堅かった。平安京建都間もない頃に、海印寺(長岡京)を創建した道雄上人が孟宗竹を中国から移植して、太くて柔らかなタケノコがもたらされた。三国時代の呉の県令—孟宗が病の母のために、雪中から掘出した孝行談として伝わるタケノコである。
 日本人はというべきか、京都人はさらに栽培方法に工夫を加えて、その孟宗竹タケノコを京風に改良してしまった。毎年毎年藁を敷き盛土をしてきた結果、嵯峨から西山そして乙訓エリアに広がるタケノコ山は、もはや竹藪ではない。見事に手を加えられた竹林として観光資源となり、文字通りタケノコの温床となった。柔らかで白いアクの無いぽっちゃりした京タケノコである。鳴門ワカメと炊合せた若竹煮は、サクッサクッとした食感とほのかな甘味をもっていて、気分も体も若さみなぎる春の味である。

 昨年上海で食した炒め物の本家タケノコは、クロくて堅くてエグかった。タケノコ本来の味なのだろう。と、いうことは山はまだ有害物質に汚染されてはいないのかな…。 (M)

【2016年04月01日】

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