コラム

2017.10 京の庭・京の広場 笠置山自然公園…忍者の原点、修験道の山

笠置山自然公園

 京都府の最南端の町である笠置町の笠置山(かさぎやま)は、修験道の行場であった。仏教伝来以前の修験道の開祖役小角(えんのこづね)の葛城山とも近く、周りの山里には伊賀・甲賀の忍者の里や、徳川将軍家のゲシュタポ役であった柳生一族の本拠があり、修験者、山伏、忍者の影が随所に見え隠れするエリアの中心に位置する山である。

 木津川からすぐに佇立する笠置山は標高300m足らずではあるが、起伏に富み巨木や巨石奇岩が点在して、その迫力に圧倒される。かつて修験者や山伏が森羅万象に神の霊を感じ、山そのものを御神体とし、山中で修行することで超自然的な力が得られると信じていたことも頷ける。
 忍者の起源には諸説あるが、鎌倉時代に荘園の中で発生した「悪党」に起源があるのではないかとも言われている。建武の中興の際には後醍醐天皇が天然の要塞としてこの山に行在所を構えて鎌倉幕府と対峙したが、天皇サイドで活躍した楠正成のゲリラ戦法も修験者―忍者の影響があったことだろう。自然を畏敬し、自然に学び、自然に訓練された修験者たちが戦国時代に地侍となり、誰よりも素早い行動力と自然を活用した戦法を学んで、先達として各地を巡って情報収集や錯乱工作を行ったのではないだろうか。

笠置山自然公園2
 自然公園となった今は、気軽に行場巡りに挑戦できるよう歩道や広場が整備され、小学生から年輩の方まで幅広い年齢層に人気の観光コースとなっている。山頂近くのもみじ公園では11月には紅葉が見頃を迎え、ライトアップも催される。
 高さ15mの岩に掘られた本尊弥勒磨崖仏(みろくまがいぶつ)、天衣をひるがえしてすわる虚空蔵磨崖仏(こくぞうまがいぶつ)が姿を残し、1,300年の歴史を持つ笠置寺の和尚さんは、「雄大な景色を見たり、岩に触れたり、自然との一体感を感じることが、まさに“笠置山での修行”である」と、日本古来の山岳信仰と仏教の融合した教えを説いてくれる。

 この山を道場とした修験道の厳しい修練は、最早遠い過去のことではあるが、山道で汗をかきながら自然を崇めて、山頂の広場で清廉な気分に浸ってみたい秋の一日である。(M)

【2017年10月02日】

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