コラムcolumn

2024年08月26日

全国最低の行政サービスと全国最高の市民負担

 財政破綻した夕張市は,「全国最低の行政サービス,全国最高の住民負担」と言われ,高齢化率も高く,東京23区よりも広い地域に小学校はたった1校しかないという教育環境,行政サービスはギリギリまで切り詰めることを迫られています。
 夕張市が財政再建団体となり、基本方針とし「巨額の赤字を解消するため、徹底した行政のスリム化と事務事業の抜本的な見直しを図ることとし、市民生活に必要な最小限の事務事業以外は原則廃止」されました、主な内容として総人件費の大幅な削減が求められ、全国市町村の中で最も低い給与水準及び人口規模が同程度の市町村で最も少ない職員数となっています。
 そんな夕張市内を「ぐるっと夕張 今昔物語」として地元のガイドさんの説明を聞きながら視察し、最後に夕張市の財政課より「夕張の財政再建と地域再生の取組みの説明を受けました。最初に視察した夕張市石炭博物館の展示室の入口に、今回のタイトルである「全国最低の行政サービスと全国最高の市民負担」の自虐的な垂れ幕が印象に残りました。

 夕張市を視察して感じたこととして、令和2年に全館休館となったホテルマウントレースイ、廃墟となっていたアドベンチャーファミリー跡、キネマ街道として映画のある街夕張の名残りのある手書き看板ストリート、令和元年に廃線となったJR夕張駅など廃止となった施設がそのままの状況であること。夕張市財政課の説明では指定管理者の運営により存続していると説明があった健康会館、しかし、地元のガイドさんの話によると現状は窓ガラスが割れている状況で運営ができていないとのこと。廃止となった施設の解体やその後の施設の活用方法は後回しにされていると感じました。そんな中でもコンパクトシティに向けた公営住宅の集約として令和4年に完成した宮前町「泉」団地がありましたが、地元のガイドさんによると旧炭鉱の老朽化した市営住宅の家賃が安いということで、新しい市営住宅に入居しない住民もいるとのこと。
 夕張市の財政課から視察の説明を受けた、夕張市拠点複合施設「りすた」は令和2年に公共施設として開館した立派な施設でした。夕張市としては、廃墟となった施設の後始末よりも住民が喜ぶ新たな施設が欲しいということも理解できます。
 今回の視察に同行してくれた地元のガイドさんからは、「財政破綻した夕張だけど、それでも夕張のことが好きです。行政に求めるとしたら今後の夕張の絵(計画)を示してほしい。」とのことが心に残りました。
 夕張市の栄枯盛衰の歴史や自治体が事業を行うことの意義や難しさ、住民の意見をどう集約するのか、多くの自治体で抱えている人口減少の中での行政運営や施設の適正配置を考える必要を感じました。

システムディ顧問 宮澤 正泰(元習志野市会計管理者)