コラムcolumn
2025年02月20日
「学校給食費の公会計化について」
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学校給食費については、「学校給食費の公会計化」・「学校給食費の無償化」で議論されているところです。私が議員向けの公会計の研修をしていた際に「学校給食費の公会計化」について質問がありました。話を聞いてみると、ここでいう「公会計=官庁会計の現金主義会計」と発生主義会計の「公会計」を勘違いしていることがわかりました。
学校給食費の公会計化とは学校給食費を地方公共団体の会計に組み入れる現金主義会計である官庁会計の「公会計制度」を採用することであり、発生主義の公会計制度を採用することではありません。
いまでも多くの自治体で、学校給食費を私費会計として、学校の校長口座で学校給食費の徴収金や給食費の食材費の支出の管理をしている現状があります。それはなぜなのか過去の経緯があることがわかりました。我が国で学校給食が実施されたのは明治22年(1889年)、山形県鶴岡市の私立小学校において、仏教慈善団体が生活の苦しい家庭の子どもを対象に昼食を与えたのが最初といわれています。昭和7年(1932年)には国庫補助による給食が実施されるも、第二次大戦の深刻化とともに中止され、昭和22年(1947年)1月に全国の児童を対象に給食が再開されました。そのときの給食費については実費徴収とされました。その後、昭和29年(1954年)に学校給食法が法制化され、調理担当職員の人件費や設備費が公費負担となり、主に食材費のみが学校給食費として保護者負担となりました。学校給食は、保護者負担による実施が先行した後に法制化された事情がありました。その当時の行政実例として「校長が、学校給食費を取り集め、これを管理することは、さしつかえない。」など学校給食を地方公共団体の収入として取り扱う必要がないという学校の私費会計を追認した状況です。
では、いまなぜ学校給食費の公会計化が求められているのでしょうか?私が習志野市在職中に学校給食の担当者から、学校給食の私費会計では、未納の学校給食費の回収のために教員や事務職員の臨戸訪問などの負担があり、そもそも法的手段などの滞納整理などの知識もないから私費会計から公会計に移行したいとの相談がありました。
その当時、私は学校給食法を理解していなかったので、「公金として扱う学校給食費も受益者負担の考えで、人件費や施設の減価償却費なども応分の負担が必要となるのでは?」の意見に対し、担当者より学校給食法などにより設置者である市側と保護者側の負担は決まっていると教わったことがありました。
以下学校給食に要する経費の負担区分
保護者 | 食材料費 | パン・米飯・牛乳・おかず等の代金 |
設置者 | 光熱水費 | 調理、手洗い等に要する費用 |
施設整備費 | 学校給食実施のための施設整備費 | |
修繕費 | 学校給食施設整備修繕費 | |
人件費 | 学校給食に従事する職員に要する給与、その他の人件費 |
学校給食費の公会計化については、文部科学省は「学校給食費徴収・管理に関するガイドライン」を策定し、令和元年(2019年)に公表されました。学校給食費の公会計化に伴い見込まれる効果の概要は下記のとおりです。
学校給食費の公会計に伴い見込まれる効果 | |
①教員の業務負担の軽減 | 督促業務から解放されて子供に向き合う時間や授業改善の時間を確保でき、学校教育の質が向上する。 |
②保護者の利便性の向上 | 納付方法を多様化することができ、保護者の利便性が向上する。(クレジットカード、コンビニ払い等) |
③学校給食費の徴収・管理業務の効率化 | 一括したシステム管理や外部委託等により、財政面を含めた業務の効率化が見込まれる。 |
④学校給食費の管理における透明性の向上 | 経理面の管理・監督体制や監査に機能が充実する。 |
⑤学校給食費の徴収における公平性の確保 | 効果的な徴収により、滞納が減少する。 |
⑥学校給食の安定的な実施・充実 | 効率的・効果的な食材調達や、他部局との協働で地産地消の取組などもしやすくなる。 |
学校給食費の公会計化に向けて担当者と協議を重ねているときは、文部科学省のガイドラインも公表されておらず、公会計制度の導入はハードルが高いと感じていました。そのとき、私は「給食費を無償化にすれば解決する部分が多い」と担当者に伝えたところ、「そうなればいいですね。でも、財源的に無理ですよね。」私も無理と思っていました。
文部科学省の「給食無償化」に関する課題の整理について(令和6年12月27日)によると、令和5年9月1日時点で、自治体独自で全ての小中学校児童生徒を対象に無償化を実施した自治体が547団体もあるとのこと。財源が厳しい自治体もあることから、効果的な少子化対策には国による一律の無償化が実現されればよいと感じています。
システムディ顧問 宮澤 正泰(元習志野市会計管理者)