2016/12/01
2016.12 京の食材 聖護院蕪・千枚漬け…味良し、姿良し、ヘルシー京漬物
ロシア民話のあの「大きな蕪」は、ロシアのような大きな国にはきっとあるのだろうと想像していた。おじいさん、おばあさん、お孫さんそれに犬や猫まで動員しても抜けなかった。よほど根が張っていたのだろう。登場人物がだんだん小さくなっていって、最後の小さなネズミで抜けたというところが面白かった。
聖護院蕪は、直径20~30cmだいたい2リットルの薬缶ぐらい、ロシアの蕪ほどは大きくはないが、それでも日本で一番大きな蕪だろう。根菜だから、大根や人参と広い意味で親戚なんだろうが、蕪には少し高級感がある。値段ではなく、ハッパや根(蕪)の姿、形が美しい。そして、そこはかとなく甘味もあって上品である。鰤やカンパチとの炊合わせ、摺って白身魚を包
み込んだ蕪蒸しも美味しい。が、最高の贅沢は、京漬物の傑作『千枚漬け』である。
蕪は見た目ほど丈夫な野菜ではない。特に聖護院蕪は繊細で、気候や土壌に左右されやすい。江戸時代は鴨川沿いの聖護院付近で栽培されていたが、都市化に追いやられて西に移動し、今は保津川沿いの亀岡や南丹市でその多くが栽培されている。盆地特有の寒暖差と朝霧が最適なのだそうだ。確かに、根菜でありながら蕪の食べるところはその殆どが地上に出ている『胚軸』と言われる部分で、直接冷気と湿気に触れることによって瑞々しくそして甘く育つ。
12月から1月下旬の最も寒い時期に収穫された蕪は、1mmほどの厚さにスライスされ一枚ずつ丁寧に樽に漬込まれる。3日間ほど経て樽出しされた千枚漬けは、しんなりヌルヌルしながらシャキッとした食感の爽やか漬物。3~5日間ぐらいが美味しさの期限とか。保存食とは言い難いが、ペクチンや消化酵素の豊富なヘルシー漬物なのである。(M)
[取材協力:二条通寺町東入ル 京漬物 福田本店]