2017/11/01
2017.11 京の庭・京の広場 浄土真宗本願寺派総本山…国宝に囲まれて、お西さんの庭
仏教が飛鳥時代に百済から伝来して間もなく1,500年。奈良仏教から平安仏教そして鎌倉時代へと信仰を深め、かつ拡め、法然・親鸞聖人以降は民衆の間へとさらに拡大し、時に権力に取り入り、時に対立して、必ずしも信仰心が厚いとは言えない日本ではあるが、広く浸透してきた浄土真宗。
余りに強大になりすぎてか、徳川家康によって堀川通の西本願寺と烏丸通の東本願寺に分割されたが、結果的には夫々がさらに信徒を増やして、文化庁の調査によると、西本願寺だけでも今や末寺18,800寺、門徒694万人、日本最大級の宗教法人『浄土真宗本願寺派』となった。その総本山である龍谷山本願寺は、“おにぃッさん ”と呼ばれるほど市民に身近な存在である。
大きな門をくぐると、ローマのサンピエトロ寺院に勝るとも劣らない広い境内。彼方は全て石造り・石畳だが、こちらは 白砂利の庭を木造建築が囲む。庭の中央には異形の巨木が鎮座している。 幹を地中に伸ばして根っこが空に広がっているようなので『逆さ銀杏』或は『水吹き銀杏』とも呼ばれる、幹回り4~5mの巨木である。天明の大火の時にも焼けずに、幹の中心から大量の水を噴出して鎮火したという伝説の銀杏。11月中旬には黄金に色づいて、つかの間光彩を放つが、総本山の庭の中央にご神木のように敬われているところが如何にも日本的で面白い。
この庭を囲んで、ご影堂や阿弥陀堂の大きな木造建築が建ち並ぶ。今は修理中だが、京都三閣の一つ飛雲閣も優美な軒先を覗かせている。これらの建て物はいずれも国宝・重要文化財で、文物を含むと数知れぬほどの国宝の“宝庫”でもある。越前の吉崎御坊から京都山科、そして大阪の石山、幕末の京都と何度も戦乱の地を変遷しながら、これだけの文化的歴史的遺産を維持してきた信仰の力に敬服させられる。
ヤンチャだった団塊の世代も、そろそろお寺さんのことを考えなければと…、高齢化社会到来の日本である。(M)