2019/03/01
2019.03 新京都八景…春風に乗って『SUINA室町』京都経済センター3月オープン
四条烏丸は、かつては京都の金融の中心であった。1990年頃までの日本経済が活発で、それ故金融業界も元気な頃の話である。烏丸四条の四つの角は全て都市銀行が抑え、そこから地方銀行や証券、保険業界のお店が軒を並べていた。
バブル経済崩壊後の統合再編を経て、今は烏丸通りの東側だけが銀行で、西側は南北ともにファッションビルとなった。南側のビルは、COCON (『古今』)、北側はLAQUE(『仏語で「漆」、洛=京都』)。そこにこの3月、四条室町にSUINA(『粋な』) が仲間入りする。オジサンが若者に合わせようと無理した捩りネーミングだが、この室町通も巻き込んだトライアングルに若者たちが集まるようになれば何よりである。
正式には京都経済センターというこのビルには、京都の40余りの経済団体がその本部を構え、産業を支え経済を活性化する拠点と位置づけられる。
中心部の伝統工芸産業と外縁部のハイテク産業が混在して独特の産業風土を形成してきた京都とは言え、20世紀後半以来のIT利・活用による情報産業の発展には大きく遅れを取っている。インバウンドを当て込んだ観光客の誘致―観光産業の振興も、ホテルや民泊改め町家”風”簡易宿泊所の乱立に終わりかねない底の浅さで、永続的な産業の育成にはほど遠い。
遅まきながらではあるが、経済界が立ち上り、行政がバックアップする形で、起業を支援する経済・産業団体と資金面で支援する信用保証協会が一体となって、新産業―ベンチャー育成の基盤を整えた意義は大きい。3階には、起業を目指す若者が先輩経営者らと情報交換などの交流が図れるオープンイノベーションカフェが設けられる。この3月18日には知恵ビジネス大交流会が行われる等、新旧掛け合わせた新たなビジネスが生まれる場となる。
若者たちが気楽に出入りし、刺激的な催しが継続的に取組まれるようになれば、或は学生や観光客が滞在するだけの街から脱皮し、京都自体が新ビジネスのインキュベーターとなり得るかも知れない。そのためにも、受止める側の半役所的体質の払拭は当然として、贔屓の引き倒しにならず、若者たちの自立心を育み、創造力を触発しやる気を引出し、持続発展し得るノウハウの提供を期待したい。かつての成功体験を辿るのではなく、既存のビジネスフレームを超えたところに新規事業は現れる。任天堂も京セラも、そして日本電産もロームも自助努力で活路を切り開いたのだから。(M)