2020/03/02
2020.03 レトロ京都…老舗が軒を連ねる姉小路、レトロな“新風館”もまだ青い!
御池通りと三条通りの間の姉小路通りの、特に烏丸通りと寺町間には名店が多い。「先の戦争(応仁の乱)のあと創業致しまして」と、500年とか300年の老舗が並ぶ。柚味噌、生菓子、茶道具、顔料専門店など、かなり凝った高級商品、それだけに敷居も値段も高い。お店自体が伝統工芸であり、造形美術である。露出を嫌っているのか、めったにメディアには登場しない。京都の真ん中でお店を構え続けている矜持が、黒光りするような光彩を放っている。レトロと言うには畏れ多い。
この姉小路の烏丸の角に建つのが、新風館である。こちらは黒光りするほどでもなく、レトロそのものである。昭和の初めごろ出来た旧電電公社の電話交換所が、20年前に複合商業施設として改装されて新風館となった。地味な代赭色のレンガと対照的な南欧風のパティオのアーチ型の窓が楽しさを醸し出し、FMラジオ『京都α』でライブを流し、中庭のステージではコンサートや結婚式など催され若者文化の発信拠点となっていた。ベストリフォーム賞を受賞したのは、そのレトロな外観の建物を新しい文化の発信拠点にしようという心意気への評価でもあった。
そして三度目の模様替えをした。東側に、大きく増築してアメリカのホテルチェーンを招き、『エースホテル京都』として今年4月オープンする。新風館はそのままにして、『伝統と革新の融合』というコンセプトを継承しつつ、『この場所ならではの魅力的な施設』を目指しての再々出発である。外国人観光客を呼び込もうと『キョウト』を意識してデザインされたのか、白木を組み合せた神殿風のアプローチや犬矢来を逆さにした様な庇が目を引く。
そして、地下には4つのミニシアターが開設されるということだ。東京の吉祥寺や渋谷で成功した、実験的な映像と音楽のアンサンブルが展開される。若者文化の新しい発現が期待されている。
新生新風館が発する外国文化や若者文化が、品の良い姉小路の老舗文化と交錯してどのように変容していくだろうか? 5年もすれば、結果が出ていることだろう。(M)