コラムcolumn
2023年03月13日
「公会計」と「太陽の男」
先日、猪瀬直樹氏(前東京都知事)による「太陽の男 石原慎太郎伝」を読んだ。
全体は作家としての石原慎太郎氏の伝記であり、「太陽の季節」でのデビューを中心に、人間石原慎太郎の様々な面が描かれた興味深い本であった。終戦から戦後の第1期、私の一つ上の世代の心の起伏がよくわかる良い本であった。
又、その中で石原都政と関係のある話が一つだけ存在した。臨海地区の開発でも、オリンピックでもなく、「公会計」の話であった。それも二頁にわたるこの本の中では唯一の「政治」の話であった。意外(?)に真面目な、正しい解説が石原氏の本の引用として書かれていた。他のページとは異質であったが、私は正直大変うれしかった。
もうすぐ、石原慎太郎氏が曽祖父の世代になる方々が、公会計の実務に携わる頃となる。彼は、多分60をすぎてから、この運動を展開したのであろうが、若い時には芥川賞をとり、その影響下でできた「太陽族」という若者集団の頂点にいたことも知ってほしい。
今日、公会計を生み出した父であることを忘れないことにしたい。そして公会計も単に主張や制度の構築をしただけでなく、それを有効に用いて、破綻寸前であった東京都の財政を年間余剰1兆円弱、実質無借金経営に近い超優良団体に作り直した実践家であった。
猪瀬氏はこの書物の中で石原慎太郎氏「価値紊乱者(※)」と呼ぶ。たぶん既製の古びた価値を紊乱させるのであろう。公会計も又、その意味で新しい価値を創造していくものと私は考えたい。
※三島由紀夫氏が、石原慎太郎氏との対談のなかで、石原氏を評して「道徳紊乱(びんらん)者」と呼んだ。その後に石原氏は「紊乱者」という言葉を流用し、「価値紊乱者の光栄」という論文を発表したことに由来。
■浅田 隆治(アサダ リュウジ)
公認会計士・税理士。
任意団体の公会計改革に協力する会計人の会会長を経て、一般社団法人地方公会計研究センターを設立、代表理事に就任。
現一般社団法人地方公会計研究センター名誉会長。
株式会社システムディ公会計ソリューション事業部顧問。
株式会社パブリック・マネージメント・コンサルティング顧問。
ウッドランド株式会社代表取締役時代に、社団法人日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会(現一般社団法人ソフトウェア協会)の会長を歴任。
監修した書籍に『公会計が自治体を変える!バランスシートで健康チェック』がある。