コラムcolumn
2024年01月23日
亀とたこ焼きの事例から公会計を理解しよう
発生主義・複式簿記を導入した「公会計」が自治体に導入され、財務書類等が作成されています。しかしながら、公会計の財務書類等は予算に活かされていない自治体も多いのではないでしょうか。なぜなら多くの自治体職員は簿記の知識がないこともあり「公会計」はよくわからない。」と思っているからです。
私自身、簿記の知識がない職員でも「公会計」を理解するための研修はどうしたらよいのか苦労をしました。そんな中で、「亀」と「たこ焼き」の事例は多くの方からわかりやすいと評判がよかったので紹介したいと思います。
■事例 「お祭りで子どもが「亀」と「たこ焼き」を買いたいとせがんだ。」
「亀」も「たこ焼き」も500円とします。この場合、たこ焼きを買うことはよしとしても、亀を買うことにはためらうことでしょう。なぜなら「亀」は何年も生きるし、その間のエサ代やケージの購入や毎日の世話をすることが大変だからです。「たこ焼き」はその場で食べて、おいしかったという満足があればいいわけです。発生主義の知識がなくても「亀」は資産であり、「たこ焼き」は費用であるという考え方は身についているのです。
ここでおわかりのように、今後官庁会計の予算を考えるうえで、これは「亀」なのか「たこ焼き」なのかを考えることは公会計を予算に活かすことになるでしょう。ちなみに、「亀」は自治体でいえば「建物」という資産だとすると、自治体の公共施設等総合管理計画に沿った予算要求であるのか、建物の建設後の費用もしっかり考えているのか、などが予算審査の前提となるでしょう。
特に、自治体の資産は民間のように利益の追求が目的でなく、住民の福祉が目的です。その目的達成のためには長期にわたり維持管理等のコストも発生します。このことから建物ごとの住民の利用状況・施設維持管理状況・コスト情報などを施設カルテとして作成し、建物が解体するまで継続して見守る必要があります。まさしく亀の成長記録を付けることかと思います。亀が天寿を全うしたとき、お金と手間がかかったが、それ以上に癒されたという満足感があればいいのではないでしょうか。
システム ディ顧問 宮澤 正泰(元習志野市会計管理者)