コラムcolumn
2024年05月21日
借金よりも資産が多ければ財政破綻はしないのか?
新公会計制度の必要性を感じていない財政担当者もいます。
その理由の1つが「建設公債主義」というものを守っていれば財政破綻はしない、つまり財政規律は守られるという考え方です。どういうことかというと、借金つまり地方債の発行には、地方財政法という法律によって建設事業の財源にしか充てないというのが「建設公債主義」です。これは、膨大な赤字国債を発行している国とは大きく異なる点です。
また、地方債の償還期間は当該地方債により建設された公共施設等の耐用年数の範囲内とすることも地方税法第5条の2に規定されています。
(地方債の償還年限)
第5条の2 ・・・建設事業にかかる地方債の償還年限は、当該地方債を財源として建設した公共施設又は公用施設の耐用年数を超えないようにしなければならない。
このことから貸借対照表上の建設事業で建設された公共施設等の資産は地方債である負債を上回る状態になりますので、自治体経営の持続可能性が維持できる、すなわち財政規律が守られるということです。
この考え方は、負債よりも資産が多ければ財政破綻しないということでしょう。つまり資産を売却すれば借金を返せるとうことだと思います。しかしながら、自治体の資産は売却による現金収入が難しいものであります。また資産を保有することにより、住民サービスには寄与しますが、資産を保有することによるコストも発生していることも事実です。
財政非常事態宣言をした自治体の中には、財政力指数の高い自治体が含まれています。これは債務の返済ができなくなったことによる財政危機ではなく、資産を保有することによる減らすことのできない固定的な経費の増大による財政危機とも言えます。
いずれにしても借金ありきの財政運営は見直しをする必要があり、発生主義の基礎データを活用して、様々な角度から借金はどのくらいが適正なのかを検討しなければなりません。さらに、資産の状況については、施設カルテなどを作成することにより施設に係るコストや事業コストなどの固定的な経費を継続的に把握していくことが財政破綻を防ぐ効果的な方法であると思います。
このように建設公債主義だけでは財政破綻は防げません。特に「資産」は負担という認識を持つ必要があります。
システムディ顧問 宮澤 正泰(元習志野市会計管理者)