コラムcolumn
2025年01月22日
「生活保護費と地方交付税交付金」
個人に支給される「生活保護費」と地方公共団体に交付される「地方交付税交付金」が同じ仕組みであるように感じています。
生活保護費は、憲法第25条で保障された生存権の趣旨から、国が国民に対して最低限の生活を保障するものです。
この生活保護費は、住んでいる地域や収入、家族構成などにより細かく設定されています。要するに、最低限度の生活費が算定され、収入があればその分が差し引かれるイメージです。
地方交付税交付金は、地方公共団体の財政力に違いがあるので、それを調整するために国が地方公共団体に交付されるものです。
この法律は、地方団体が自主的にその財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する機能をそこなわずに、その財源の均衡化を図り、及び地方交付税の交付の基準の設定を通じて地方行政の計画的な運営を保障することによって、地方自治の本旨の実現に資するとともに、地方団体の独立性を強化することを目的とする。
どの自治体も、このくらいのお金があれば最低限の公的サービスができるという金額が基準財政需要額になります。この基準財政需要は人口や面積、道路の面積、小学校の児童数など様々な項目から算定されるものです。これは、自治体版の生活保護制度のようなものです。基準財政額に満たない収入しかない自治体は、地方交付税の交付金がもらえることができます。
生活保護費は最低限度の生活をするためのものであり、生活保護費から貯金をすることは想定されていません。ここで学資保険訴訟(最高裁判所判例)の概要を紹介したいと思います。生活保護費から毎月3千円の学資保険の積立て、満期返戻金約45万円を受け取ったがその金額を収入として福岡市の福祉事務所が認定し生活保護費が減額されました。最高裁判所は、最低限度の生活を維持し、子供の高校就学の費用を蓄えることは生活保護法の趣旨に違反せず、生活保護費を減らした処分は誤りとして処分を違法であるとの判例です。
地方交付税交付金をもらっている自治体でもあっても、自主財源なので使途は自由に決められるはずですが、2015年度には基金積立残高が21兆円あることから国からはその背景・要因について把握分析し、改善を検討すべきとされました。
さきほどの学資保険の積立のケースが参考になるように感じています。
この件に関して、関西学院大学ビジネススクールの石原俊彦教授は、「地方自治自治体が有する基金21兆円の正体とは?」をJIAM「全国市町村国際文化研修」のメールマガジンのコラム(2017.7.26)の中で、次のように述べられています。
「経済財政諮問会議が提起した21兆円の基金問題について、政府と地方自治体の無用な対立を避けるため、説明責任を果たす際の有用なツールとして会計リテラシーを活用することが重要である。『21兆円の基金は、地方自治体が貸借対照表に計上している減価償却累計額の相手勘定である。もしこれがなければ、インフラや施設の更新が不可能になる』。『減価償却累計額は、地方自治体が実施予定の公共事業であり、政府はこの金額を参考に、自治体の建設補助のあり方を政策立案すべきである』。会計の知識があれば、21兆円の基金問題は、こうしてすんなりと決着をつけることができる。」
石原教授の言うとおりであると、私も思います。
システムディ顧問 宮澤 正泰(元習志野市会計管理者)