コラムCOLUMN

2013/05/01

2013年5月 京のゲート-『新緑の南禅寺山門』

 知恩院、久遠寺の門と合わせて、日本三大門の一つである南禅寺の山門は、「三門」ともいう。空門、無想門、無願門の三つの門を通過して、仏の世界に至るとか。
 臨済宗南禅寺派の総本山である南禅寺は、1295年に創建されたといわれるが、山門はその後焼失し、大阪夏の陣のあと戦に倒れた武士の菩提として、藤堂高虎が再建したものである。

 高さ22m。木造建築の門としては、確かに巨大。支える円柱は直径1m、俗世間のあらゆる煩悩を断ち切るにはコレぐらいの迫力が必要なのだろう。

 山門を棲家にしていた伝説の盗賊石川五右衛門が、その楼上から「絶景かな、絶景かな…」と、春宵の京都に感動したのも肯ける。その五右衛門も煩悩を断ち切れなかったのか、仏の世界には行けずに鴨の河原で釜茹でされてしまった。

 迷いや欲望から解脱できない身にとっては、ぬるま湯に浸った茹で蛙にならないよう自戒したいところではある。

 紅葉の名所としても有名だが、新緑の5月も素晴らしい。東山を借景にした境内には、木造と瓦の寺院建築と違和感なくローマ式赤煉瓦の水路閣が横切り、これもまた紛れもない京都の景観なのである。(M)

(南禅寺は京都本社より東山仁王門通りへ、その東の突当り。車で約10分の処に位置します。)

一覧へ戻る