2015/02/01
2015.02 ミステリアスin京都 都の守護山『船岡山』-温泉旅館のない『温泉街』
千本通り(元朱雀大路)の北の正面に小高い山がある。船の形をしているので昔も今も船岡山と呼ばれるこの山は、平安京の玄武に位置する。その昔、山頂に立った桓武天皇の目には、大内裏とまっすぐに南に延びる朱雀大路、それを中心軸にした左右対称の都がパノラマのように拡がったのだろう。造営後は、都の守護神か背後霊のように玄武大神が奉祀られ、遊興、散策の地としても親しまれていたことが枕草子などからうかがえる。
ではあったが、現在の船岡山は寂しい。観光客の姿も殆ど見ない。決して門を閉ざしている訳ではない。季節の多様な樹種を楽しめる森と小奇麗な公園もあり、眺望も良い。しかし、生半可な訳知り顔では、来ないでおくれ!と、容易には受け入れてくれないように見える。‟一見さんお断り“のようにも感じる。
戦国時代の幕開けとなった応仁の乱では西陣営の戦略要地となり、管領細川家の内紛による船岡山合戦、そしてその戦乱の時代に終止符を打った織田信長・信忠親子の『建勲(タケイサオ)神社』。つまりは、平安京の始まりも都の機能喪失も、都の復活もこの船岡山がポイントとなっていた。
数々の歴史の舞台にありながら、ありきたりの観光コースには納まり切らないミステリアスなゾーンが船岡山なのだ。
だが、その船岡山の麓、東西に走る鞍馬口通りにはナント温泉街があるではないか!? 国の有形文化財に登録されている極彩色の『船岡温泉(…実は銭湯)』を初め、銭湯を改装したキッチュなカフェ『西陣さらさ』、或は世界中の珈琲を味わえるその名も『ガロ』など、ゲストハウスはあっても旅館はない温泉街が時空を超えて繁盛している。こちらもまた、ミステリアスなストリートなのである。(M)